仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
第十三章 戸惑い
なぜか一希の様子が変わった。

ある日を境に、早く帰宅するようになったのだ。

それまでは早くどころか帰宅すらしない日が続いていたので、美琴は油断してのんびりと食器を片付けていた。

そこに一希が帰って来た。

久々に見る姿にドキリとしながらも、平静を装い挨拶をする。

「お帰りなさい」

「ああ……ただいま」

一希は立ち去らずに、なにか言いたそうにこちらを見ている。

嫌な予感に苛まれながら、確認する。

「今日はずいぶん早いのね、何かあるの?」

(また文句でも言うつもり?)

今日は外出もしていないし後ろめたいことなは何もない。

それだけに内容が予想出来ないと、警戒しながら彼の冷ややかな目を見返す。

「いや、何もない」

「? そう……」

拍子抜けして、片付けの続きをしていると一希がいなくなっていた。

(また戻ってくる前に早く部屋に引きこもろう。顔を合わせないのが一番平和だしね)

てきぱきとキッチンを整えると、美琴は足早に納戸部屋に滑り込む。

一希がなぜ帰宅したのかは謎のままだった。


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