仮面夫婦~御曹司は愛しい妻を溺愛したい~
第四章 離れる決意
一希の食べなかったポトフとおにぎりで朝食を済ませてから、美琴は家を出た。

結婚してから初めての外出だ。

屋敷の門を抜けると、久しぶりの開放感を覚える。

駅までは美琴の足で十五分ほど。

通り沿いに植えられた、トウカエデの美しい葉に目を奪われながらも、立ち止まらずに足早に進む。


昨夜、実家の継母から連絡が入った。

家族皆が風邪を拗らせてしまったので、一日だけでも助けて欲しいと。

美琴が家を出てから継母が頼って来たのは初めてだ。余程大変な状況なのだろう。
迷いなく了解の返事をした。


美琴の育った実家は、小さな文房具店を営んでいる。
大手文具メーカーや、通信販売などと比べて品揃えは悪く、店構えも昔ながらのものだ。

地元の学校や企業などとの契約があり、豊かとは言えないまでも家族が困らずに暮らせていたのだけれど、父が倒れてからは、数社の企業から契約を切られてしまった。

今は残った学校や企業との取引のほか、細々とした店頭販売の売上で、暮らしているけれど 毎月赤字で、それだけでなく、仕事と子育てを両立しなくてはならない継母の負担は大き過ぎた。
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