星空電車、恋電車

過去から今日へ

****

知らない番号から電話がかかってきたのは翌日の夜だった。

もしかしたら・・・
もしかしたら

心臓がドキドキしている。
でも、早く出ないと切れてしまうかも。

テーブルの上で光っているスマホを手に取った。

「もしもし」

緊張して声がかすれているような気がする。

「千夏?」

「うん。樹先輩?」

「そう。---よかった。千夏。やっと連絡できた」

「うん・・・」

4年ぶりに聞く樹先輩の声は少し低くなっているような不思議な気持ちがする。私が緊張しているせいなのかもしれないけれど。

「京平から聞いて昨日のうちに連絡したかったんだけど、まだ仕事中だったし、落ち着いて話せる自信もなくて。連絡しなくて悪かった。で、色々話したいんだけど。電話じゃなくて、直接。近いうちに会えないかな?」

急に京平先輩から真実を伝えられて樹先輩だって驚いただろう。冷静になれなかったかもしれないし、心情は察するに余りある。
私の方には直接話したいと言われて断る理由はない。もちろん会いたい。

「私、今は神戸に住んでいるんです。樹先輩は東京ですか?」

「そうなんだ。でもこの週末は休みだからよかったら神戸に会いに行きたいんだけど、千夏は何か予定が入ってる?」

樹先輩が神戸に?
本当に?

「ありません、予定ないです。でも遠いのにいいんですか」

「大丈夫だよ。土曜日に行く。千夏と直接会って話がしたいし。神戸に着いたら電話するから待っててくれる?」

「はい、わかりました」

それから待ち合わせの場所を決めて電話を切った。

・・・まだ胸がドキドキする。
樹先輩だった。
本当に連絡があった。

大学で再会した時は拒絶することしかできなかったのに4年以上待たされた今は会いたい気持ちしかない。

恋というのとは違うかもしれない。
過去の恋や憧れを終わらせなければ私は前に進めない。

樹先輩に恋をした高2からもう8年。
私ももう24歳。
そろそろ先に進もう。
< 148 / 170 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop