恋を忘れたバレンタイン
残されたバレンタイン
月曜日が待ち遠しいような、それでいて不安で潰れそうな、なんとも苦しい朝を迎えた。


 オフィスに入れば、彼女の姿が直ぐに目に入った。

 今日、話をしたい。
俺は焦っていた。明日から海外出張で、早くとも三週間は帰れない。このまま離れてしまったら、彼女との事が何事も無かったように終わってしまう気がする。一晩だけの過ちにでもなったら絶対に嫌だ。


とにかく、彼女を捕まえて話がしたい。だが、俺がこれだけ彼女に視線をぶつけているのに目すら合う事がない。


 苛々しながら、あっという間に昼になってしまった。

チャンスだと思い、彼女の後を追うが、いつものごとく女子社員達の輪に連れ込まれる。こんな事なら、愛想なんて振るんじゃなかったと思うが今更遅い。


 女子社員達の怪訝そうな顔を後に、俺は慌てて彼女の後を追った。

列に並んで、適当に頼んだ定食を手にする。


彼女を探すが、一歩先に部長が彼女の前に座ってしまった。

 なんでこんな時に部長がと思うが、部長が居れば俺が彼女の前に座るのも違和感がないだろう。


 俺は、彼女と部長が座る席に向かった。

部長の後ろから平然と声を掛けた。
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