夕闇の時計店

-夜桜-

☆episode1☆
-夜桜-


月明かりに照らされた桜が時折風に煽られて舞う。

薄い花びらがゆらゆらと落ちる。

「綺麗ー……」

緋瀬時計店のドアからやってきたお屋敷の縁側に座り、足を宙に揺らしながら桜を眺めていた。

この立派な庭と古い造りのお屋敷は、緋瀬さんの自宅なんだとか。

ここは、私の住んでいる世界とは別の、鬼や猫又といった妖が生きる世界だとか。

……驚くことたくさんありすぎ。

でも、まあ……それ以上に

「……ふふっ」

緋瀬さんとこれからも一緒にいられることが嬉しくてたまらない。

「待たせたな……何笑ってるんだ?」

「緋瀬さんだって笑ってるじゃないですか」

「そうか?」

綺麗に微笑む顔を見上げて、幸せが込み上げてきた。
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