一目惚れの彼女は人の妻
痴漢疑惑の真相〜宏美Side〜
 その翌日。私は時計を見て、お昼ちょっと前に職場を飛び出し、総務部へ向かった。加奈子とランチをするためだ。

「加奈子、行くよ!」

「な、なに? どこへ行くのよ?」

「お昼に決まってるでしょ?」

「なんだ、お昼か。何をそんなに焦ってるのよ?」

「時間がもったいないから、早く早く……」

 という感じで私は加奈子を誘い、会社の外の和食と韓国料理がコラボしたような、ちょっと変わったお店に行った。そこは個室になってるから、内緒話をするには都合が良いと思ったから。

 加奈子は鯖の味噌煮を頼み、私は石焼ビビンバを頼んだ。ここの石焼ビビンバは絶品で……という事は置いといて、私は早速話を始めた。

「昨夜ね、うちの会社と俊君の会社で懇親会があったのね。高級料亭で」

「高級料亭で? すごい、贅沢だなあ」

「で、俊君と二人だけで二次会に行ったのね。そっちは駅ビルの小さな居酒屋なんだけど。で、その後、俊君と一緒に電車で帰ったんだけど……」

 と、一気に言ったところで、

「ストーップ!」

 加奈子に止められてしまった。

「あんたさ、飛ばし過ぎだよ。高級料亭の話とか聞かせてくれないわけ? 料理の事とかさあ」

「だって、何も報告する事ないんだもん。あ、そうそう。二次会で、俊君とピラニアの話をしたんだ」

「ピラニアがどうしたって?」

「それを飼うのが俊君の趣味なんだって。つまり、俊君には残虐なところがあるわけよ。見かけによらず」

「それは短絡的過ぎない?」

 え?

 なんか今、加奈子に反論されたみたいだけど、まあ、いいか。話を続けちゃおうっと。

「それとね、俊君は意外にエッチだって、分かったの」

「男はみんなそうでしょ?」
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