一目惚れの彼女は人の妻
「それはそうかもだけど、今日の加奈子、感じ悪い」

「そう? それは、ごめん。でもさ、今日の宏美はテンション高過ぎ。いつも冷静なあんたにしては、珍しいよね?」

 確かに。それは自分でも思ってる。さすがに、昨夜飲んだアルコールが体に残ってるとは思わないけど、昨夜のテンションの方は、まだ抜けてないみたい。

「帰りに、俊君と何かあったの?」

 来た!

 と思ったら、お昼ご飯が来た。それと、加奈子も"俊君"って言ったけど、まあいいか。許そう。

 私は石焼ビビンバをスプーンで混ぜ混ぜし、加奈子は、コロンとした鯖の味噌煮に取り掛かった。

「宏美、話の続きは?」

「え? ん……もういいかな」

 なんか、急にテンションが下がってしまった。加奈子が冷静で、私の話にチャチャを入れるし、考えてみれば、昨夜の私の行動は、親友相手でも話すのは恥ずかしいと思われ……

「そう言わずに、話してよ。もうチャチャは入れないようにするからさ」

 なんて、親友から眉を下げて言われたら、話すしかないよね。

「わかった。話すね。加奈子の意見を聞きたいし」

「うんうん、任せて?」

「俊君と私は、実はご近所さんで、地元の駅で一緒に降りたのね。で、私はベロベロに酔ったフリをして、彼を夜の公園に引っ張って行ったの。その目的は……」

 私は、昨夜の公園での出来事を、有りのまま、包み隠さず加奈子に話した。
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