Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
苦しみに立ち向かう強さ
2人で揃って礼を取ると、端的に言われた。

「お疲れのところ、申し訳ありませんが、王子が晩餐を共にとお誘いしております。」

じろりと見られて、2人ですくみながら分かりましたと言うと、出て行った。







「晩餐?って断れないわよね。」

「そうですね。それよりも、与えられたものには袖を通さなければならないのでしょうか、、、」

「そうでしょうけど、これは私のために作られたのかしら。

それだったらこの国は私に何を求めているのかしら。」

2人で呆然としながらクローゼットを開ける。

先程、下品だとマリンに言われたドレスたちが相変わらず並んでいた。

この中からましなものを探さなくてはならなくなった。

2人で両側から別れて探すけれど、選び抜いた3枚はどれも自分では、注文しないし着ようとも思わないものばかり。

結局決めたのは、レースで胸元が透けて見えるし、スリットがそこそこ深めに入っているもの。

座ってしまえば、気にならないだろうと考えるのはやめた。

着せてもらうと、想像以上に紺のレースが見えている肌を目立たせる。

スリットも小股でちょこちょこ歩かないと見えすぎて恥ずかしい。

大きめのネックレスをつけて隠してみたけれど、そこまで変わらない。

いやいや晩餐に出発することにして、心配そうなマリンに見送られた。





「やぁ、リリアンヌ嬢。

お疲れかと心配していたが、相変わらず美しい。

疲れていたとしても、料理人が腕をふるった料理人を食べれば、元気になるだろう。

こちらへ。」

エスコートされて、席につくとあろうことか隣に座った。

「あの、、、」

なんと言っていいか、言葉が続かない。

少し驚いた顔の給仕たちが続々と入ってくる。

どんどんと運び込まれる、皿はどれも美味しそうだ。

正直食欲はあまりないけれど、無理やり押し込んで、飲み込む。

腹が減っては戦はできぬ。

それに、フォルティスから元気でいてほしいと言われたのだから、頑張るしかない。





子羊のソテーから、鯛のポワレ、デザートのチーズケーキはどれも美味しかった。

ワインもいつもはそんなに飲まないけれど、すごく薦められるから少し多めに飲んだ。

料理に合うように、数種類を飲み分けるのは意外と楽しかったし、参考になる。

「これは、飲みやすいはずだよ。」

銘柄を見せてもらったけれど、これも知らない。

国でワインの種類も違うみたいで、知っているのは2種類だけだった。

飲んでみるとジュースみたいで、驚くほど飲みやすい。

「本当に美味しいです!」

「でしょう?もっと飲んで。」

「ありがとうございます。」

次々と注がれて、3回はおかわりしてしまった。

いいのかな?と思ったけど、彼がいいって言うし、彼自身も飲んでいるから問題ないだろうと思った。





一粒ずつ味の違うチョコレートを食べながら、話しているうちに、飲み過ぎたことに気づいた。

少しずつ呂律が回らなくなり、ふわふわした気分になる。

察したようにシェヴァ王子に支えられて立ち上がると、自分の足につまずいてしまう。





慌てて差し出してくれた手に掴まると、そのまま抱き上げられてしまった。

「そんな、王子申し訳ございません!

下ろしてください!」

持ち上げられるとスリットが開いてしまって、太ももまで見える。

なんと伝えたらいいのか、おどおどしていると通りかかる騎士の方たちの視線が気持ち悪い。

ちょうどよく出てきたマリンに目配せする。

「シェヴァ王子様!

リリアンヌ様のスカートが、、、」

わかってくれた!




「え?あ、あぁすまない。

それにしても、このドレスはあまりリリアンヌ嬢らしくないですね。」

もちろんそうだ。

私だって全く趣味じゃない。

「これは用意していただいたお部屋のクローゼットに入っていたものです。

サイズがだいたいちょうどだったので、用意していただいたものの1つだと思ってしまったんです。」



「あ!それは、、、、申し訳ありませんでした。

元々その部屋に入る予定だった方がいたんです。

急遽片付けたため、残っていたのかもしれません。」

苦い顔をしている理由までは分からなかった。

やっぱりそうだったのかというマリンの表情。

聞いてはいけないような気がして、聞けなかった。

誰が入る予定だったのですか、と。

部屋まで支えてもらい、扉の前でお別れする。

2人で扉を開けると、目がちかちかするような家具の装飾が見える。

「はぁ、何日いてもこの部屋に馴染める気がしないわ。」

「わかります。

部屋を間違えてしまったかと思うくらいです。」

顔を見合わせて笑ったあと、ため息をつく。

「ここに誰が入る予定だったのか調べてみますね。

何か手がかりが見つかるかもしれません。」

さすが、仕事のできる侍女。

手を休めているのがもったいないというのが口癖だ。

おそらく今日のうちに他の侍女と仲良くなり、いろいろ聞き出してくれるのだろう。

本当に頼りになる。
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