Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
朝起きると、見慣れない天井で焦ってもぞもぞと動くと手も動かないし、体を起こすこともできない。

縛られているのかもしれないと思って、ばたばたしていると、なおさら強く締め付けられてパニックになる。

「何をしているんだ。

まだ起きるには早いだろ。もう一度寝よう。」

「ふ、フォルティス?

どうしてここにいるの?」

どうしてと言いながらも、ここがどこかは分からない。

「リリこそどうしてここにいると思う?」

優しく言い返されて、嫌な予感がする。

「ここはどこ?」

「もっと早くそれを聞くと思ったんだけどな。

ここは、俺に割り当てられた部屋。

リリがここにいるのは、離れようとしなかったから。」

「わ、私が?」

「あぁ、婚姻を結び終わっていないからさすがにダメだろうと思って部屋に送りに行ったのに、ベッドの上で下ろそうとしても、腕を首に絡めて離れなかったんだよ。

それで、まぁ離れる必要もないか、と思ったから連れてきたんだ。」

「そ、そんなこと、、、」

「あり得ないって?

俺が着いたぞって言ったのに、また会えないの?って言い返されたんだ。

無意識かもしれないが、可愛かったぞ。」

「ごめんなさい。重かったでしょう?」

そんなに離れない私を抱いたままあちこち歩き回らせていたなんて。

叩いてでも、蹴ってでも起こしてくれたら良かったのに。

「いや。むしろ軽すぎて心配なくらいだ。

俺は牢で暇すぎてトレーニングばかりしていたから、最高の状態なんだ。

リリは向こうにいたときよりも痩せたな。」

「私も少しトレーニングしていたのよ。

痩せたのもあるけれど、運動不足を解消したって感じかしら。

意外と、やるって決めたあとのマリンはスパルタなのよ。

最初は反対して、おとなしくしていた方が良いって言ってたのに、いろんなメニューを教えてくれたの。」

「そうか、マリンに感謝せねばな。

確かに腰回りは細くなったが、こっちは減っていない。」

向かい合ってこそこそとしゃべっていた私の腰から、上に手をスライドさせ、右胸をそっと覆った。

「な、何するのよ。」

「何って確認だよ。

昨日抱き上げたときにも分かってたけどな。」

「も、もう。恥ずかしい。」

たまにこういうことを言うから、困る。

「後少しで、全部俺のものになるだろ。

婚姻の儀の夜、何をするかは分かっているよな?

まさかマリンに教わってないのか?」

きょとんとした私にびっくりしているフォルティス。

「何をするの?

まさか、練習してないのにすごく難しいことをしなきゃならないの?」

「ぶはっ、練習なんてしないよ。

止められるわけがない。

そうだな、朝の支度の時にでも、聞いてみるといい。

ただし、マリンと2人っきりの時にな。」

「?ええ、わかったわ。」

「これは先が思いやられるな。

泣かれるわけにもいかないし、本当に練習するべきなんじゃないのか。」

ぼそりと天井に向かってつぶやいた言葉は、小さ過ぎて聞き取れなかった。

聞き返しても、なんでもないと言われて終わりだった。






今まで沸々と浮かんでいただけだったけれど、、

「フォルティス、教えてほしいわ。

フォルティスが知っているのに私だけ分からないことが多すぎると思うの。

世間知らずなんて陰でこそこそ言われなくないわ。」

そう。知りませんでした、ではいけない日がくるのだ。

私の知識の狭さが、評判に直結するような日が。

だから私はそう真面目に言ったのに、、、

「悪かった、リリ。

俺から教えてもいいんだけど、教えるだけで止まれるか分からないんだよ。

それこそ、練習なんてしたら絶対に無理だ。

そうだなでもリリの願いも、正しいし尊重したい。

初夜、と言えばさすがになんとなく察しがつくか?」

手を握り、手の甲を撫でられる。

ただそれだけのことにゾクッとした。

つまり、フォルティスは男女の睦事を言わんとしているわけで、私は、、、

「ち、違うのごめんなさい。

練習なんて言って困らせて。

フォルティスの口からぽんと教えられることではないのに、無理に教えてもらおうとするなんて。

正しい知識は確かにないけど、マリンにこっそり教えてもらっておくわ。」

「参ったな。

俺の奥さんは純粋過ぎて、、、

大丈夫か?

さっきぼんって音をたてそうなくらい恥ずかしそうにしてから、顔が真っ赤だよ。」

そう言いながら、フォルティスの少し冷たい手で両頬を優しく挟んで冷ましてくれる。

気持ちよくてうっかり目を閉じると、そのまま口づけされてしまった。

長くくっつき、離れたと思い息継ぎをしようとしたら開いた唇を啄まれる。

上唇を食べられてしまうくらい、いじめられる。

息が苦しいと伝えるために、私の首に添えられている腕の袖を少し引っ張った。

「リリ、鼻で呼吸するんだよ。」

「無理だと思うわ。

鼻息荒くなっちゃうもの。」

「そうならないように少しずつするんだよ。

これは練習できるからね、いっぱい練習しような。」

そう言ってにやにやすると、覆い被さってキスをされ、マリンが来るまでの十数分離してもらえなかった。
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