Fall in Love. ~一途な騎士団エリートによる鈍感公爵令嬢の溺愛~
自分が失敗せずに出席者全員にあいさつをして帰って来れたのか不思議なほど記憶がない。

楽しそうにしている彼にあっさりと明後日の休みを聞き出されてしまい、もっと自分を知ってもらうためだ、と説明する彼の勢いに負けて、反論できず、出かける予定を組まされてしまった。

そっと右手の甲にキスをして颯爽と立ち去った彼に、即座にかける言葉も見つからず、呆然と見送ることになってしまった。

「リリアンヌ様、何かあったんですね?」

ネックレスを外しながら、おずおずと好奇心を隠せないように聞くマリンに、鏡越しに尋ねる。

「そんなに分かりやすかったかしら?」

手早くヘアアクセを外しながらマリンにきっぱりと答えられてしまう。

「はい、それはもう。お部屋にお戻りになったときから。

ふわふわとして夢の中にいるようでしたよ?」

しっかりできたと思っていたが、できていなかったらしい。

きっとお父様やレインにはバレている。

しかられてもしょうがないほど、キャパオーバーな事態だったのだから。

自分では処理しきれずにマリンに打ち明ける。

「あのね、やっと会えたの。送り主に。」

主語がなくても分かるくらい、マリンも気にしていたらしいのが伝わる。

「!!そうですか!それは良かったです。

どんな方でしたか?」

興味深々といった様子で聞きながら、メイクを落としてくれる。

「そうね、、、すてきな方だったわ。

それに、、、明後日に会う約束しちゃったの。」

「まぁ、本当ですか?喜ばしいことですね!




もしかして、リリアンヌ様は嫌なのですか?

それにしても、リリアンヌ様が男性と出かけるなんて。

初めてではないでしょうか?」

びっくりしながらもいつもより饒舌に話すマリンに聞かれて気づいた。

確かにそうかも知れない。

「なんとなく、断れなかったのよ。なんとなくね。」

「リリアンヌ様は自分の意見をはっきりと言える方です。

きっとなんとなくでも、嫌ではないと思ったのではないでしょうか?

もしかしたら、そのなんとなくが、大切なことを教えてくれるかもしれませんから大事にしてくださいね。」

いつにも増して、真剣な顔のマリンに釣られて、私も真面目に返事を返す。

「わ、分かったわ。」

どこかでかけることを楽しみにしている気がする。

私、柄にもなくウキウキしてるわね。

どこに連れて行ってくれるのかしら。

最近流行りの劇場?それとも、王都の市場?

でも、なんだか彼のイメージには合わないのよね、、、

天気も良さそうだし、遠出もできるかしら

そういえば何時に来るか、聞いてない。

普通はお昼前に来るぐらいよね、、、

お風呂でのぼせそうになるほど、いろいろ考えたが、結局いいアイデアは浮かばなかった。
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