旦那サマとは打算結婚のはずでしたが。
初めからやり直し
「……俺じゃ駄目なのかな」


急に弱気な声を出した彼を振り返る。
皆藤さんは眉尻を下げ、情けなさそうな表情でこっちを見下ろしていた。


きゅん…と何故か胸が狭まった。
この人のこんな顔を見たのも、多分初めての様な気がする。


「俺じゃ、君の役には立たないのかな。そりゃ確かに俺は庭仕事をしたこともないし、知識もまるで無いに等しいよ。…でも、君が望めば幾らでも庭仕事を手伝う気でいたし、少しは頼って貰えるかなと思ってたんだ。だけど、君が頼ったのは俺じゃなくて同僚だった。そして、そいつは俺よりも筋肉が付いてて、重機も扱えるから頼りになるよね」


自分とは比較にならない…と彼は続ける。その言葉を聞いて、胸がズキッ…と鳴った。


「それならせめて体だけでも鍛えて筋肉を付ければ少しはマシになるかもしれないと思った。それでスポーツジムに入会して、短時間でもいいと思って始めたんだ。
短時間でも案外と汗をかくもんなんだよ。それでシャワールームを使って、さっと汗を流してから帰ってたんだ」


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