異世界から来た愛しい騎士様へ
第6話「大きくなった背中」





   第6話「大きくなった背中」




 約束を交わしてから、エルハムとミツキの距離は縮まった。
 エルハムは、どんな自分を見せてもいいと言ってくれた彼を信頼し、ミツキは素の自分を見せてくれる彼女を信頼した。


 エルハムが教えた事をミツキはすぐに覚え、実行した。仏頂面な彼だけれど、挨拶をしたり、世話係のような事も積極的に行っていたため、城の者たちも次第にミツキを認め始め、好感を持って見ているようだった。
 騎士団でも、1番下っ端というのを理解しており、誠実に訓練や仕事に取り組んでいるようだった。それに、ミツキが使う剣術である「ケンドウ」を騎士団でも少しずつ取り入れているようで、それをミツキが指導していた。
 ミツキの強さや、堅実さを見られ、騎士団でも認められているようだった。


 そんな彼を見て、エルハムは嬉しいながらも、少しの寂しさがあった。面倒を見てきた弟が一人立ちするような切なさを感じていた。
 けれど、彼との時間がなくなった訳ではない。エルハムが出掛ける時は必ず護衛してくれたし、騎士団の練習がないときは、エルハムの近くに居てくれた。
 寝ているときは流石に同室とまではいかないので、特別にエルハムの下の部屋がミツキに与えられた。元々物置だった小さな部屋だけれど、ミツキが「物音がしたらすぐに駆けつけられるから、ここに寝泊まりしたい。」と要望し、それが叶ったのだった。
 そこまで、自分の事を考えてくれる彼は、とても頼りになり、年下の少年とは思えなかった。



< 27 / 232 >

この作品をシェア

pagetop