異世界から来た愛しい騎士様へ
第7話「日常とざわつく心」
第7話「日常とざわつく心」
コンコン。
静かな朝に、部屋の扉を叩く音が響く。
いつもならば、エルハムはその音で目覚めていた。けれど、この日は少し前に起きており、すでにベットから出て、着替えをしていた。
「はい。どうぞ。」
「……失礼致します。おはようございます。姫様、今日はお目覚めが早いですね。何かありましたか?」
「おはよう、ミツキ。何もないわよ。ただ、懐かしい夢を見ていたから起きていただけ。」
「懐かしい夢?」
その質問にエルハムが「ええ。」と頷き、部屋の端にある小さな収納棚の上を見つめた。そのには、細かな装飾と透明に光る宝石が散りばめられているティアラが置いてある。
それは、いつもそこに置かれてあり、エルハムによって大切にされてきたものだった。
「……お母様の夢よ。あのティアラは、お母様が結婚式の時に使われたものなの。」
「………そうでしたか。姫様、体調は大丈夫ですか?」
「えぇ。大丈夫よ、ミツキ。ありがとう。」
エルハムの母である王妃について話をすると、ミツキは少し戸惑い、そして心配そうな目でエルは目を見つめる。
ミツキは知っているのだ。
エルハムが母の夢を見た時は、体調が悪くなったり、気分が悪くなる事がある事を。
「今日、街に行くのは違う日にしますか?」
「本当に大丈夫なの。今日は良い夢の方だったから。それに楽しみにしていたのだから、街に行くの中止にされると、そちらの方が悲しいわ。」
「……わかりました。」
ミツキはまだ心配そうにしていたけれど、エルハムがニッコリと微笑みかけると、それにつられるように、少しだけ口元を緩めてくれた。