転生令嬢は小食王子のお食事係
 緩く波打つ栗色の髪は艶やかで、化粧をほぼしていないようだが滑らかな白い肌にぽってりとした桃色の唇が美しかった。
 おざなりに聞いた話では王妃の女官をしている伯爵令嬢らしい。
 自分とは生まれも育ちも違いすぎる彼女に、ほの暗い嫉妬心がこみ上げてくる。
 さすがに王妃の女官に手を出すわけにはいかないが、彼女が来たことによって王子がここに滞在する時間も増えるかもしれない。
 そのときはチャンスだ。
「さっさとやるべきことを片づけて、こんなところからおさらばするんだから」
 そのためにもまずはお父様に報告に行かなければ……。
 使用人専用の裏口につくと、人が周りにいないことを確認して外に出る。
 目指すは王宮の本殿。
 そこで待つ男にどう報告するか頭で考えながら、私は使用人しか通らない薄暗い裏道を進んだ。
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