転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ ~次期皇帝と婚約なんて聞いてません!~
エピローグ
「タケル様ー、こんなところにいたんですね。送別会始まっちゃいますよ」

 ヴィオラの声に、窓際でぼーっとしていたタケルが振り返った。

 タイシンの件もあり、ヤエコは一度帰国することになった。春にもう一度こちらを訪れ、ミナホ国との国交を開く件については、その時正式に条約を交わすことになったという。

 ラファエラ妃に関しては、現在謹慎中だ。次に何かあれば、ティアンネ妃同様離宮に追いやられることになるだろう。

「……今回は、世話になったな」

「あら、私は何もしてないですよ。それは、リヒャルト様に言わないと。今日は、カレードリアが出ますからね! ヤエコ様にも楽しんでもらわないと」

 ヤエコが国に戻るにあたり、タケルも満月宮に移動してくることになった。

 もともと皇帝一族が住むための建物だから、部屋は何十室もある。ヴィオラの他に、タケルが増えたところで問題はないのだ。

 そして今日は、ミナホ国に戻るヤエコの送別会だ。皇妃の私的な付き合いということになるので、皇帝は同席しないが、リヒャルトは同席してくれるそうだ。

「わかった。俺、母上に話があるから先に行くよ」

 母と別れることがつらいのか、それとも信じていたタイシンが裏切ったのがつらいのか。このところタケルは少々元気がないので、ヴィオラも心配だ。

 もっとも、ヴィオラが不安に思ったところで、何ができるというわけでもないのだけれど。

(……でも、今回の件は、私もいろいろと考えさせられたわよね)

 ばたばたと走り去るタケルのあとからゆっくり追いかけながら、ヴィオラは考え込んだ。
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