My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

 私は急に落ち着かなくなって立ち上がった。

「早く来ないかな、ラウト君」
「お姉さん!!」
「ぅひゃ!!」

 暗闇からいきなり現われたラウト君に私は思わず飛び上がって驚いてしまった。

「ど、どうだっ」
「大変なんだ! お姉さん一緒に来て!!」

 私の言葉を遮って、ラウト君が叫ぶ。
 酷く切迫した様子に私はドキリとする。
 何があったのだろう。
 私はラウト君に強く手を引かれ、迷うことなく前方に見える家へと走った。



 扉代わりのぼろぼろになった布を上げ、ラウト君に続き私は中へと入った。
 中は敷物がほとんどなく、ほぼ地べたが丸見えの状態だった。そこに乱雑に鍋や皿などが転がっている。
 そして一番奥の隅に、一人の少年が横たわっていた。
 傍らで頼りなく揺れている蝋燭の明かりに照らされたその身体を見て、私は思わず口を押さえた。
 頬はやせこけ、服から覗いた腕や足は棒のように細かった。
 かろうじて胸が上下に動いているのを見てほっとするも、目の前の少年は明らかに衰弱しきっていた。

 彼が、クラール君……?

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