My Favorite Song ~異世界で伝説のセイレーンになりました!?~ 1

「どうするの?」

 バンガローに似た木造の建物の目の前まで来て私は小さくラグに声をかけた。
 するとラグは何かに気付いたように正面のドアではなく、灯りの漏れる窓へと近寄った。
 窓の横の壁を背にして中の様子を伺うラグ。私もセリーンもそのすぐ後ろについて背を低くした。
 すると、中から人の声が聞こえてきた。

「話し声! やっぱ二人いるんだ」

 私が小さく言うと、黙れというふうにラグに睨まれてしまった。
 耳を澄ませて聞いていると、どうやら中にいるカルダともう一人は揉めているようだった――。


   ◆◆◆


「全くどうしてくれる! また収穫が減ったと総督にどやされるのは俺なんだぞ!!」
「うるせぇな。問題ねぇって言ってるだろうが」

 後から聞こえてきたそのやる気の無い声はカルダのものに間違いなかった。
 瞬間あの時のことを思い出しそうになり、小さく頭を振って私はもう一度耳を澄ました。

「何が問題無いだ! 何で火なんか付けたんだ!!」

 カルダ以外のもう一人のその怒鳴り声に、私はセリーンと目を見合わせた。

「気に食わねぇんだよ、村の奴ら。絶対に何か隠してやがんだ。だから思い知らせてやったのよ、この俺に逆らうとどうなるか、な。……それに、俺が見たあの女」
「女、女って、酔っ払って見た幻覚なんじゃないのか!?」
「幻覚じゃねぇって言ってんだろうが! 見せただろうこの腹の痣!! あの女が出てきやがったらこっちのもんだぜ。とっ捕まえて、上にはそいつが火を付けたと言えばいいじゃねぇか」

 そして、へっへっへとあの厭らしい笑い声が聞こえてきた。
 私はあの黒焦げになった農園を思い出し強く強く拳を握った。
 だが、もう一人の男は当然のことながらまだ納得していないようだった。

「出てこなかったらどうする気だ! それでなくともあの村はいつもいつも収穫が少ないってのに……あぁ、また総督に怒鳴られちまう。お前も、覚悟しておけよ!」
「うるっせぇな。初めから言ってただろうが、俺にゃ向かねぇ仕事だってな。あーこんなとことっととおさらばして早く国へ帰りてぇぜ……」


   ◆◆◆
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