香りであなたを癒やします ー 王太子殿下、マッサージはいかがですか?
3、親友の妹ーアレンside
あれは十日ほど前のこと。
親友のヴィクターと昼食を共にしていたら、彼は突然フォークを置いて溜め息をついた。
『階段から落ちてから、妹は別人のようになってしまった』
彼の妹が階段から落ちて頭を打ったことは知っていたが、意識が戻ったと聞いていたし、大したことはなかったのかと思っていた。
『あの高飛車な妹が?……って悪い』
自分の失言を謝罪すれば、ヴィクターは小さく頭を振る。
『いや、謝ることはない。本当のことだから』
『で、どう変わったんだ?』
悩みを聞こうと先を促せば、彼は悲しげというよりは、どこか嬉しそうに妹のことを話して聞かせる。
『性格が可愛くなったなあ。ただ、何をやらせても駄目なんだ。こっちも頭を抱えたくなるような失敗をするんだけど、馬鹿な子ほど可愛いというか』
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