Fairy
『 …行ってきます。 』





目を開けると、視界に入るのは綺麗な顔の男性。

何度が瞬きして視界をはっきりさせると、その男性が狂盛さんだと言うことに気が付く。
あまりの顔の近さに思わず起き上がると、狂盛さんは、温度のない声で『 ご飯、出来てるよ。 』と言うと、そのまま私の部屋から出ていった。


…寝顔、見られてたってことだよね。そう思いながら、私は洗面所で軽く顔を洗って歯を磨いた。
そう言えば、部屋に私の服とか荷物とか全部置いてあったし、歯ブラシも用意されていた。
もしかしたら、狂盛さんが持ってきてくれたのかもしれない。後でちゃんとお礼を言おう。



リビングへ向かうと、三人はキッチンの隣にある食事用のテーブルで私を待っていた。とは言っても、それぞれもう食べ始めている。

椅子が四つ用意されていて、空いている場所は游鬼さんの隣。游鬼さんは、ニコニコしながら『 おいで〜。 』と、隣の椅子を叩く。
私は彼に「 おはようございます。 」と言いながら、その席に座った。向かいには狂盛さんが座っていて、さっきのこともあり、なんだか気まずい。




『 おはよう、紅苺。簡単なのを作ってみたから、久しぶりにみんなで食べようかと思って。 』




晴雷さんはコーヒーを飲みながら、そっと微笑んでそう言った。
その姿を見ると、どうしても昨日の夜に見たあの血だらけの晴雷さんとは結びつかない。


凄い…晴雷さん、料理も出来るんだ。
用意された食事を見ると、私がいつも自分で作っていたものよりずっと豪華なものだった。

いただきます、と呟いてから、料理を口に運ぶ。じわりと口の中に広がる上品な味に、思わず美味しい、と言葉を零してしまった。
すると晴雷さんは『 良かった。 』と、優しく微笑んだ。


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