過ぎた時間は違っても

本当にごめん

何で空回りしてしまうんだろう。俺はただ、唯織と一緒にいたいだけなのに。一秒でも長く触れていたいだけなのに。折角、一緒に出掛ける口実を作れたのに先に帰るなんて悲しい事言わないでくれよ。

「俺も帰る」

「それじゃ意味無いでしょ」

「じゃあそばにいてよ。俺は唯織が好きなんだ。分かってるだろう?」

唯織の右手が俺の頬を叩いた。震えている体で勇気を振り絞って出した平手打ちは俺の心まで泣かせようとしてきた。
俺の心が何で泣いているのか、唯織は知らないかもしれない。でも、唯織の両親から聞いてしまったんだ。後半年も生きられないって。だから尚更そばにいたいのに、離れるなんて言わないでくれよ。
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