過ぎた時間は違っても
流れそうになる涙を隠すように唯織の手を掴んで歩き出した。足がもつれてしまうほど早く動かしていたけれど、人影の無い細い通路に入った俺は唯織が逃げてしまわないように壁に手を付けた。

「いい加減にして。やって良い事と悪い事くらい分かるでしょ」

「そうやってあの子に俺を押し付けるのか?・・・そうやって自分がいなくなった後で悲しまないようにしているのか?」

俺を睨んでいた目は何で知っているのかと問い掛けるように見開かれた。
何で唯織だけ苦しまなきゃいけないんだ。何で他の人じゃダメだったんだ。何で今、この若さで生涯を終えなきゃいけないんだ。
どうして俺の周りばかり苦労しなきゃならないんだよ。どうして俺の周りばかり不幸にならなきゃいけないんだ。どうしてそんな運命なんて作ったんだよ。
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