妖狐の瞳に恋をした
元の生活
2週間ぶりのデュパンは、いつものように珈琲の香りで私を迎えて

くれた。マスターも変わりなく、常連の岩井さんも相変わらずだった。

バイトが終わって家に帰ると萌から電話がきた。

「瑠璃、明日時間ある?」

「明日は夕方からバイトなんだけど、それまでなら大丈夫だよ」

「じゃあ、10時に駅で待ち合わせしよう。ちょっと、お洒落して

 来てね!」

「は?何それ?」

「いいから、いいから。じゃ、明日。」

萌の態度に(イブカ)しく思いながらも、言われたとおり服を選ぶ

ことにした。

「そんなお洒落な服なんか、ないんだけど・・・。」

クローゼットの中を見ながら、無難な白いノースリーブワンピースに

薄手のカーディガンを手に取った。

姿見の前に立ち、服を合わせてみる。

鏡の中には、翡翠と対の耳飾りをつけた自分が映っていた。

“翡翠・・・”
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