real feel

困惑と失態の週末  ※佐伯翔真視点

──4月15日。

まひろが出張に行って会えない週末。
今日は久し振りに休日出勤した。

まひろとコンビを組んでいる時はプロジェクトで忙しいときを除いて休日出勤なんてすることはなかった。
それだけ仕事が捌けたということだし、休日は出来るだけ2人でゆっくり過ごしたかったから。

今だって特に急ぎの案件があるわけではないが、1人の休日を持て余すよりは仕事したほうがましだというわけだ。
しかし、そんなことしなければ良かったと後で後悔するなんて思ってもみなかった。
休日出勤することは課長しか知らないはずなのに、なぜか高柳まで出勤してきたのだ。

「あら、翔も休日出勤?私はまだ異動したばかりでペースが掴めてないから少しでも早く慣れたいと思って」

休日で他の課員がいないせいか、気を抜いて昔のように親しげに話しかけてくる。
面倒だな、こいつ。

「気が散るから話し掛けないでもらえますか?」

「酷いわね佐伯主任。こういう時くらい親切に教えてくれていいんじゃない?その徹底した敬語も今はやめてくれたらいいのに」

ふざけるな。
もう関わりたくないと思ってるのに、親しく話すつもりなんてない。


──17:30。

時間を持て余したらしい高柳が帰ってから数時間。
雑音が入らなくなって、没頭していたがそろそろ切り上げ時か。
今日はこのあと蘭家にお邪魔する事になっているから、何か手土産でも買って行かなければ。

PCにデータ保存して帰り支度をしていると、帰ったはずの高柳が舞い戻って来た。

「あ、翔!私忘れ物しちゃったみたいで……。まだ居てくれたんだ良かった。私の携帯見なかった?」

……知るかよ。

「さあ。仕事に集中してたんで分かりません。ご自分のデスクじゃないんですか?」

携帯忘れるなんて、バカだろこいつ。

「あ、あった!!私のデスクの上に置いてあったぁ」

< 28 / 221 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop