彼はネガティブ妄想チェリーボーイ
ことの始まり
駅前すぐの銀座商店街横丁。
ここで俺と沙和は生まれ育った。

駅前と言っても、実は歩くと妙に遠い。
「昔はここの目の前に駅があってメインの通りだったんだ。」と父さんは言う。

数年前に駅が移動してからは、今はなんとも寂しい一角。

だけど、うちの古臭いバーにも不思議と毎日一定数の客が来る。
全部おじさんと年齢不詳のキャバ嬢。

「店の雰囲気が崩れる」とかで、俺は店には行ってはいけないことになっている。
それは俺にとってはすごく好都合で、夕ご飯は一番楽しみな時間だった。
親同士の契約で、一食500円で沙和ん家の定食を食べられるからだ。

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