クールな次期社長の溺愛は、新妻限定です
第四章 溺れるから手を離さない
 八月とまだ夏真っ盛りなのに、夏至を過ぎたから以前より日が暮れるのがわずかに早くなった。

 うっすらと暑さが(やわ)らいで空が陰りだした頃、私はホテルグローサーケーニヒを訪れていた。

 まさかこのドレスをこんなにも早く再び着る機会に巡り合うとは。クリーニングにすぐに出しておいてよかった。

 誰も気にしないとわかっていても着ていく場所が同じなのもあり、せめて髪型とアクセサリーは前回と変えてみる。

 サイドの髪を編み込み後ろでまとめて、化粧もしっかりと施し、何度も鏡で全身を確認しては(なか)ば自己暗示で自信をつけてきた。

 今の私はホテルにもレセプションパーティーの会場にも見劣りしないはずだ。

 地下一階へのレストランにはエレベーターではなく階段で向かった。招待状を見せ、受付で案内される。

 ひとりだし場違いかもしれないという不安はレストランの中に足を踏み入れてすぐに消え去った。

「すごい」

 部屋の真ん中に設置された円筒状の大きな水槽にま、ずは目を奪われる。感嘆の声を漏らして、足早に私は四方の壁沿いに埋め込むようにして設置されている水槽に近づいた。

 普段、壁際にはテーブルが配置されるが、今日はどの水槽もよく見えるようにと配慮され、立食式の料理テーブルは壁から少し離れた場所で一列に並んでいる。

 すでにウェルカムドリンクが配られ、多くの出席者がグラスを片手に各々におしゃべりを楽しんだり、水槽を眺めている。
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