いきなり婚─目覚めたら人の妻?!─
ノンフィクションより怖いものはない
翌日は特に変わったこともなく午前の仕事を終えて昼休みになり、いつものようにお弁当の入ったバッグを持って社員食堂に向かおうとすると、優花が私の目の前にメモを差し出した。

【ここにスマホを置いて社員食堂に行きましょう】

なぜ直接言わないのかと不思議に思っていると、優花はそのメモ用紙の下にさらに文字を書き加えた。

【詳しいことはあとで話しますので、今は私の言う通りにしてください】

再び私の前にメモを差し出した優花の表情は真剣そのものだった。

直感的に、ここは黙って従った方が良さそうだと思い、スマホをデスクの引き出しの中にしまって席を立つ。

彩名と果歩も一緒に社員食堂に向かい、3人が日替わりランチの乗ったトレイを手に席に着くと、優花はようやく口を開いた。

「小柴さん、昨日警察に行ったんですよね?どうでした?」

「スマホもパスポートも家の鍵も、通帳と判子も……とにかく現金以外は無事に戻ってきたよ。スマホの回線も銀行口座も止めてもらってたから、たぶん大丈夫じゃないかと思うけど……」

< 622 / 991 >

この作品をシェア

pagetop