夜空に君という名のスピカを探して。
五章 キミと私のストーリー
 うん、閃いた。

物書きに必要なのは、ちょっとした閃きだと私は思う。

こう、アイデアが空から降りてくるみたいな。


『私たちの話を小説にしようかと思うんだけど、どうかな?』

「俺たちの物語?」


 休日の朝、私たちは宙くんの部屋の机に置かれたパソコンに向かっていた。

宙くんが湯気がゆらゆらと立っている淹れたてのコーヒーに口をつけると、ミルクと砂糖の甘みが口内に広がる。

宙くんが私のためにブラックじゃなくて、甘いコーヒーにしてくれたのだ。

その気遣いに、改めて胸が温かくなった。


『宙くんと私が出会った日から、今日までのことをなにかに残しておきたくって』


 宙くんが夢を一緒に叶えようと言ってくれたときから、ずっと考えていた。

綴るなら私たちの軌跡がいい。

それこそが、私がここにいたという証になると思ったからだ。


「いいんじゃないか? で、なにから書く?」

『そうだなぁ、まずは私たちの出会いから』

「出会いね……」


 私たちの会話は、いったんそこで途切れる。

たぶん、ふたりで同じことを考えているのだろう。

宙くんと出会ったあの日は──。


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