アンティーク
雨の冷たさ

それは偶然だった。

外に出ようとした時、2人の姿が見えた。

将生と玲奈さんは同じ方を向いていて、玲奈さんの手は将生の背中に触れていて、どう見たって俺が入れる雰囲気じゃなかった。

2人の関係性を知らない人から見たら、それはどう見たって恋人だ。

見たくない。

その気持ちは一向に大きくなるなのに、俺の目はその2人に釘付けになってしまう。

本当に、見たくないのに。

その場からいなくなりたいのに、脚は鉛のように重くて動かない。

時間が経っても、自分の目は2人を捉えて離さない。

暫くすると、2人は別れて将生がこっちに向かってくる。

逃げないと、そう思うのに未だに脚は動かず、ついに将生の目は俺を見つけた。

「レオ……」

「ああ、今、ちょっと画材を買いに行こうかと……」

「……見てた、のか?」

うん、と声が出ない代わりに俺は首を一度だけ縦に動かした。

「そうか」

と、将生は俺から視線を外してばつの悪そうな顔をすると、それ以上将生から今のことについて話そうとはしなかった。

俺は、そんな将生の姿を見て心では思ってもいないことを言ってしまう。
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