その人は俺の・・・
・episode2ー毎日会いたいー
【早速ですが、次回は美術館デートにします。いかがでしょうか。希望時間帯と曜日、ご都合をご連絡願います。
それから、今日の反省点、あれば次回にいかせるよう思い返してみてください。こちらに要望があればそれも、考えておいてください】
あ、……先生。今はごめんなさい。
「愛生?教室はどうだったんだ?そんな…大したことなどなかっただろ…」
「はい。極、普通だと思います」
食後の紅茶を用意していた。
「そうだろ。で、どうなんだ?引き続き、行くのか?大体、教室なんて通わなくても、愛生は花は生けられるじゃないか。いつも綺麗に生けてある」
見ていたビジネス雑誌を捲る音が早くなった。苛立っている証拠。
「……それは。ですけど、通いたいと思ってます。……どうぞ」
…。
「ん……、まあ、いいだろ。……ああ、来週、大阪に出張だ」
…出張。
「…あ、はい」
「一泊する。宿泊先はいつものビジネスホテルだから」
「解りました」
「留守中は充分、注意するんだよ。うっかりすることのないように。鍵は家に居てもいつもするように」
「はい、忘れないようにします」
「ん。じゃあ、先に休むから」
残っていた紅茶を飲み干した。
「はい」
カップをさげてキッチンに持って行った。
ん、まだダイニングに居るようだ。
…静かだと不安になる、…何か察して、考え事をしてるのだろうか。私、別に浮かれた顔つきはしていないと思う。でも次の習い事は出張の日に合わせようと思ってしまったから…途端にドキドキしていた。
不意のことだった。
「あっ。あの、何か……あ、お水ですか?後でお持ちしますね」
…心臓が驚いていた。止まるかと思うほど跳ねた。
「ん。……愛生…。ドキドキしてるな、びっくりしたのか…待ってるよ」
席を立った夫は片付けをしている私の元に来て後ろから腕を回しきつく抱き締めてきた。…これは…、サインのようなもの。……今夜、しようって。なぜ今夜…。そう思うといつものことも不安が過ってしまう。
囁き、耳に唇で触れ、離れると夫は寝室に向かった。
夫婦の…なんでもない会話…。いつも表情豊かに話していない分、死んだような顔で話をしても特に変わりはない。変にさとられた様子もなかった。と思う。
あ、そうだ、お水…。