雨のリフレイン

隣人

柊子の進学と、母の病気とが重なった。
母の治療にはお金がかかる。しかも、看護師の仕事も休みがちになり、収入も安定しなかった。

だから、柊子は、進学を諦めようとした。

そこで手を差し伸べてくれたのが、水上と、翔太だった。

父の残してくれた家。2人で住むには広すぎるし、体調のすぐれない母には、二階に上がって家事をするのも大変で、結局、一階しか使っていなかった。
その家を処分して、翔太の実家が持っていたマンションを破格で借りることにしたのだ。

父との思い出が詰まっていた家を出ることに抵抗はあったが、当面の生活と治療費の為、母との安全な生活の為には最善であった。


そして、そのマンションの隣には、なんと水上が入居していた。
母の急変に備えて、水上は母の病気に関する情報を集めてくれた。
主治医として、側にいてくれることの心強いこと。
実際、柊子はこの3年の間に数回、助けを求めて水上の部屋のインターフォンを鳴らした。就寝中でも、嫌な顔ひとつせずに水上は助けてくれた。


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