瞳に印を、首筋に口づけを―孤高な国王陛下による断ち難き愛染―
 片眼異色ではなくなった彼女たちの共通点を探すと、ある法則が見えてきた。彼女たちは全員、十八歳以上だった。

 神子よりも一日遅く生まれたというマリーの左目が翌日に右目と同じヘーゼル色になって気づいた。神子の力が弱まっているのではないかとの意見もあったが、そうではない

「どうやら彼に神子さまの力を幾分か持っていかれたようですね」

 正確に表すなら“持っていかれた”ではなく“押し付けた”だ。とっさのこととはいえ、ゲオルクに短剣を突きさした。どう考えても原因はそこにある。

 ()しくも昨日がレーネの十八歳の誕生日だったのだ。カインの推測にレーネは血の気が引いた。

 自分はなにも変わっていない。依然として神子の瞳の色は片眼異色のままだ。だが、ゲオルクにはどのような影響が出たのか。出るのか。

 そのとき短剣がなくなっていることにようやく気づいた。カインに問えば、倒れているレーネを発見したときには、そばにはなかったという。おそらくゲオルクが持っていったのだろう。

 彼はきっと自分を恨んでいる。

 最後に向けられた冷たい眼差しを思い出し、レーネは身をすくませた。とはいえ今は感傷に浸っている場合ではない。

 レーネは村の存在が危ういと告げ、一定数の女性が片眼異色ではなくなったこともあり、彼らは少しずつ村を後にする決意をし、各地に散っていった。

 十八歳以下の少女たちには、『いつか片眼異色ではなくなる日が来るから』と励まし続け、外の世界へと出て行く。こうして神子のいる村は消滅していった。

 アルント王国が建国したのは、それからしばらくしてのことだった。
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