王妃様の毒見係でしたが、王太子妃になっちゃいました
囚われの王子様

男爵令嬢ロザリンド・ルイスには、前世の記憶がある。
それはリルという名の犬の記憶で、その記憶を取り戻したとき、なぜか彼女は犬の嗅覚をも取り戻していた。
彼女はその嗅覚をもって、リルのご主人が経営していた宿屋で失せもの捜しをし、当時ザックと名を変えていたアイザック第二王子と出会った。

ロザリーは、そのたぐいまれなる嗅覚で、アイビーヒルで起こる些細な事件を解決し有名になっていったのだ。

やがて、アイザックが王城に呼び戻される。彼を追って王都に出てきたロザリーは、彼の母親で第二王妃であるカイラの毒見係を務めていた。
そして、史上最悪の事件が起こったのである。

病弱だった王太子バイロンが、何者かに毒殺された。その容疑者として、アイザックが捕まったのである。

「そもそも、どうしてザック様が犯人だと疑われたんですか?」

ここはイートン伯爵邸の応接間だ。
テーブルを囲むように配置されたソファに、イートン伯爵一家とロザリー、そしてレイモンドとクリスが座っている。
幼いクリスはそこまででもなさそうだが、レイモンドは自分の場違いさに居心地が悪そうにしている。

「バイロン様が絶命の際にアイザック様の名を叫んだのを、侍女が聞いたのだそうだ。後日、ベッドの周辺から輝安鉱の破片も見つかった。アンスバッハ侯爵は、アイザック殿が自分が狙われたときに、輝安鉱の破片をこっそりと入手していたのではないかと言っているんだ」

輝安鉱は硬度が低く、割れやすいのだそうだよ、と伯爵が付け足す。
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