ノクターン
「はい。遅くにすみません。」
優しく頷いてくれる智くんの後から 私はリビングに入っていった。
「マンション、どうだった?麻有ちゃん、あそこでいいかしら。」
香りの良いコーヒーを運びながら お母様は言った。
「もちろんです。素敵なお部屋で、もったいないくらいです。」
私も素直に答える。
「お兄ちゃん達が住んでいる青山のマンションは、初台よりは 少し狭いの。あの子達は いずれここに戻るから。」
智くんのお兄様は、結婚していて、6ヶ月の赤ちゃんがいる。
「駅近だし、広いし。中もきれいでした。」
「智之と相談して、内装のリフォーム 決めてね。あ、お父さんだわ。」
チャイムが鳴って、お母様は席を立つ。