後輩くんはワンコ時々オオカミ
ワンコ告白する


カチャ
リビングの扉の開く音に振り返ると
タオルを首に巻いた涼太が立っていた


「あ〜、少し小さいね」


パパのスウェットは涼太には少し小さいようで
袖と裾から長い手足が出ている


「眞子先輩、すみません
これ・・・」


眉尻を下げた涼太の顔は
雨に濡れた子犬のようで胸が騒つく


「ん?着替えのこと?
それパパのなの、ごめんね
下着は新品だから大丈夫だよ?」


高校一年生でおじさんのスウェットを着せられたのが辛かったのかもと謝ってみる


「え?眞子先輩のお父さんの?」


涼太の反応は意外なもので


「だって私一人っ子だから
パパのしか思いつかなかったけど
私のは着られそうにないでしょ?」


なんだか可笑しくてフフって笑ってしまった


「いや・・・眞子先輩のお父さんのなら良いんです」


涼太はやっぱりおかしな返事をして
私につられるように笑った


「クシュン」


「眞子先輩!まだ濡れたままじゃないですか!
早く制服脱いでシャワー浴びて下さい」


「あ、うん」


クシャミをしただけで大騒ぎの涼太に押されて
脱衣所まで入ると
貼り付く制服を脱いだ

今日が週末で良かった
私の制服は涼太のが乾いた後で回そう
ズシリと重い制服をカゴに落とす

涼太が待っているからと急いでシャワーを済ませた私は

脱衣所で固まった


「・・・着替え」


なにも持たずにシャワーを浴びてしまった


「どうしよう」


悩みながら髪にタオルを巻き付け
身体を拭くと
とりあえずバスタオルを身体に巻きつけてみた


「ん・・・」


私の着替えもリビングからしか出入り出来ない寝室にある

でも、バスタオルのまま此処に居る訳にもいかず

意を決して脱衣所を出ると
リビングの扉を少しだけ開けた

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