バイオレット・ダークルーラー
欲情
――…好きなのかと聞かれたら、どうしようもなく惹かれていると答える。
その果てに本当の愛が無いと知っていても
偽りをかき集めた、形に残らないものだとしても。
「朱里」
口付けと微笑みを落とした彼がやさしく笑う。
わたしが手を伸ばすと、瞬きをひとつ。
その瞬間眼光に宿った鋭さに
高鳴る胸は、正直だ。
「紫月さん」
「朱里が欲しい…」
掠れた声が熱を誘う。
彼が目を向けることなく消されたテレビは、はじまりの合図みたいだった。
「わたしも」
「…でも、ここじゃダメ」
「っ、」
「ベッド、行こうね」
軽々とわたしをお姫様抱っこして
リビングは、ぬくもりだけが残る空間になる。
…愛されたい。
しまい込んでいた感情を、彼は麗しく満たしてくれた。
あとで虚しくなるだけだとは、もちろん分かっていた。