バイオレット・ダークルーラー

願い








「紫月」

「………」

「…紫月、いたいよ」

「っ!悪い、強く握りすぎた」



――…彼がペレストロイカの最上階に住んでいるのだと、今更になって気付く。

今までは裏口から直通エレベーターで来ていたんだ。ぼんやりいくつもの点となっていたものが、徐々に線になり始めている。


わたしを部屋に入れた紫月に、いつもの余裕はない。



「……朱里、今日は帰したくない」

「っ、」

「親御さんに許可取って。…電話で俺がお願いしてもいいなら、するし」

「…いいよ。どうせ朝帰りしたって、」


「ダメだ。…親御さんとちゃんと、向き合って」



――…懇願に似た瞳。

…彼の言っていることは正しい。だからこそ、しぶしぶ通話ボタンを押すしかなかった。



『はい、水城です』

「…あ…、絵美香さんですか。朱里です」

『っ、朱里ちゃん!今日は帰ってくる?ご飯作ろうかと思ってて、』

「…ごめんなさい。今日は彼氏の家に泊まるので帰りません。父にも伝えてください」

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