愛執身ごもり婚~独占欲強めな御曹司にお見合い婚で奪われました~
4 涼介目線



出会いは小学一年生。
老舗の有名料亭毛利亭の娘の菜緒は、クラスの中でもとてもかわいくて目立っていた。
ほとんど接点がなく、最初はただのクラスメイトという存在だったけれど、席が隣になったときに俺は菜緒の笑顔に恋に落ちた。

わりと鈍感で、周りの評価にはあまり頓着しない様子の本人は気づいていないだろうけれど、俺には結構ライバルがいたんだ。

小学生特有の素直になれないことから、意地悪を言っていじめる奴もいたし、クラスで係を決める際、菜緒が立候補した係は他の男子もやりたがるので競争率が高くなった。
特に俺と争っていたのは山岡という男で、何度じゃんけん対決をしたかわからない。
けれども六年生の修学旅行のとき、同じ女の子に恋をする男同士絆が深まり仲よくなった。

俺は菜緒にひとつ嘘を吐いていた。
お見合いのとき、小学校の同級生とはほとんど連絡を取っていないと話したが、俺は今でも山岡とたまにメールのやり取りをしている。
中学から外部受験した俺は菜緒と離れるのが不安で、定期的に山岡から菜緒の近況を伝えてもらっていたのだ。

付属の大学を卒業してからの五年間は、さすがに山岡に毛利亭で働く菜緒を調査するよう頼むのも無理があったのでヒヤヒヤしたけれど、俺は早く菜緒に結婚を申し込める立場になれるよう仕事に邁進した。


「同窓会、か」


久々に山岡からメールがあった。
それは来月小学校の同窓会があるという報せで、近いうちに幹事から各自にメールが届くらしい。
菜緒はきっと出席すると言うだろう。これまで小、中、高と菜緒の同窓会の出席率は百パーセントだ。


「でもなぁ……」


リビングのソファに足を組んで座り、俺はため息をついた。
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