春の闇に連れ去らレ
あんよは上手。



どこから調達したのか、喪服を投げられた。

「なんですか……?」
「通夜だ。着替えろ」

え、誰の。
と問うて答えられたところで、自分が分かるはずもなく。

緤は言うだけ言って、リビングから出ていった。あたしは喪服を持ってその姿を探す。

シャワーの音に脱衣所へと行く。女と会っていたらしい。

成人を目前としていても節操の無さは変わらないらしい。遺伝なのか、父親の血が濃いのか。

とりあえずサイズぴったりな喪服に着替えて、軽く化粧をした。
緤がお通夜や葬式に行くのは珍しいことではない。親戚や知人が死と隣合わせの職業が多すぎるのだろう。

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