秘密の懐妊~極上御曹司の赤ちゃんを授かりました~

車内は重い空気に満ちている。後部座席で隣に座る会長を横目で見てから、気怠く窓の外へと顔を向ける。

連れて行かれた先は、産婦人科のある総合病院だった。そこで検査を受け、「まさか」が現実のものとなった。

私のお腹に、翔悟さんとの新しい命が芽吹いている。戸惑いもあったけれど、それよりも彼の子供を授かったのが純粋に嬉しかった。しかし大喜びしたくても、おめでたいという顔をしていない会長がそばにいるためできるはずもない。こんな状況での判明になったことが、悔しくてたまらない。


「大塚、その先の信号の……少し手前で、車を停めなさい」


腕時計に視線を落としつつの会長の命に、すぐさま運転席から「かしこまりました」と返事がされる。

今この車を運転しているのは、以前私と会長が顔を合わせた時にいた男性秘書だ。

やりとりを聞いている限り、翔悟さんが会長に怒りを爆発させる切っ掛けを作ったのがこの大塚さんだった。一階での私と会長とやり取りを彼が翔悟さんに話したのだ。

そのことで会長は機嫌を悪くし、今回の呼び出しには別の女性秘書を使ったようなのだが、大塚さんは秘書室長なだけあって使い勝手が良いようでこうして呼び出されている。

< 83 / 123 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop