好きなんだから仕方ない。
八章・明日へ行くために

来てしまったのか

もう、後数日しか魔界の王は生きていられない。対になっているらしい神の住み処の神もきっと後数日しか生きられない。
二人が亡くなるまで魔界で生き続けるのは無理だと思っていたエイミア様が生きていらっしゃるのはエイミア様の生命力が魔界の環境に勝ったからなのか。それとも神のご加護が何かあったからなのか。

「エイミア様。ご気分はいかがですか?」

「その声は・・・ヅヌダク・・・?元気が無い・・・けど、大・・・丈夫?」

「無理しないでください!エイミア様の苦しみを取り払えない事がもどかしいだけですから!」

声を聞いただけで人物を正確に当てられるほど、目の見えない生活に慣れたエイミア様は俺の声だけで気落ちしている事を見抜いてしまった。だからって無理をして起き上がらなくても。
俺はただ、自分が何もやっていない訳じゃないんだと思いたくて毎日エイミア様の顔を見に来ているだけなのに。申し訳ないという気持ちに押し潰されないように今日も様子を見に来たという事実を作っていただけなのに。
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