好きなんだから仕方ない。
心配されるような事は何もしていない。心配してもらう権利すら俺には無いはずだろう。なのに、どうして優しくするんだ。
エイミア様が神の住み処へ行ったら敵対している俺たちは神の使いに殺される。魔界にいれば体が持たなくてエイミア様が亡くなられる。どう動いたってどちらかが亡くなるのに離れたくなくなるだろ。

「ありがとう」

「お気になさらないでください。俺はただ、あなたの笑顔が見たかっただけですから」

さっきの言葉が最後に出せた声だったのだろう。口はありがとうと動いていたのに吐く息しか聞こえてこなかった。
もう、体力も限界に近付いている。今日中に魔界から出さなければ彼女は確実に命を落とすだろう。
寿命は分かっているのに助ける方法は見付かっていなかった。せめて、この状況を神が見ていて助けの手を差し伸べてくれたのならと願う事しか出来なかった。
< 142 / 260 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop