【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛
幻の王子様の正体 〜side隼〜

「どうしてそんな勝手なことするのッ?! 信じらんないッ! 私、帰るッ!」
「……え!? 侑李さん?」

 激怒した侑李さんが部屋を飛び出していく後姿を呆然と見つめながら、僕はどうしたものかと頭を抱えたくなった。

 僕はただ、先週侑李さんの様子が何だか妙だったから気にかかって、涼にそれとなく訊いてみたら、

『付き合うようなっても、隼が『橘』のことでかかりきりになってたから、寂しいんじゃないか? でも、自分のせいだから言えないだろうし。高梨って、自分から甘えるようなタイプじゃなさそうだし』そう返ってきて。

 諸々もなんとか解決したし、侑磨さんの強い勧めもあったため、サプライズのつもりだったのだけれど……。

 御覧の通り、結果は散々なことになってしまった。

 こうなってしまったら、僕がいくら止めたとしても、侑李さんは訊いてなんかくれないだろう。

 下手したら、余計怒らせて、『隼とはもう別れる』なんてことを言い出しかねない。

 ーーそんなことになったら絶対イヤだ。もう、侑李さんの居ない人生なんて考えられない。

 侑李さんを失ってしまうかもしれないと思っただけで、胸が苦しくて苦しくて堪らない。

 人を好きになることがこんなにも苦しいものだとは思わなかった。

 かといって、こんなところで落ち込んでいたって、状況は何も変わらない。
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