【タテスクコミック原作】鬼畜御曹司の甘く淫らな執愛

 そうしてビックリしているような間もなく、結城君の甘やかな声音が耳元で囁いてきて。

「ずいぶん、待たせちゃったね? ごめん。もう二度と寂しい想いなんかさせないから安心して? そんなに緊張しちゃって。可愛い。好きだよ、侑李」

 名前を呼び捨てで呼ばれた瞬間、身体が小刻みにブルブルと震えはじめた。

 そこへ、結城君が首筋に顔を埋めてきてじくりとした痛みを感じて。

 ーー冗談でも夢でもないんだ。現実なんだ。

 そう悟った時には、目尻から涙が零れ落ちていて。

「ヤダッ! 放してッ!」

 なんとかして抵抗してやろうと必死になって手脚をバタつかせてみるも、男である結城君の力には到底かなわないのだった。

 こんな時だというのに、何故か昔よく見ていた夢の王子様の姿が浮かんできて、隼の姿に重なった所で映像が弾けて跡形もなく霧散してしまった。

 あたかも私と隼の仲を引き裂くようにして。

 そんなことはさせないとばかりに。

 ーー隼、助けて。

 結城君の愛撫に瞼をギュッと閉ざし、奥歯をぎりと強く噛み締めながらに、こんなことを願ったところで、叶う訳がないと思いながらも、そう願わずにはいられなかった。
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