【完】スキャンダル・ヒロイン
Act5  花火大会と過去への対峙。

Act5  花火大会と過去への対峙。




7月が終わる。バイトを始めて約一か月。騒がしい毎日には慣れたけれど、最近あいつの様子がおかしい。

いや元から少し頭のネジが1本取れたような奴だったが、それにしてもおかしい。

「おいッ!し、し、し、し」

朝ご飯の用意をしていると隣で姫岡さんが頬を僅かに赤らめてこちらへ何か言いたげに口を開く。

「何?」

「山之内さんがし…し…シフォンケーキを買って来たそうだ。
冷蔵庫にある」

「それは昨日聞いてるし、後で食べるよ」

「おいおいお前ケーキを食べるだって?それ以上豚になってどーすんだ?」

ムッとした表情を向けると、ふふんと勝ち誇ったように笑う。

確かに痩せ型の姫岡さんに比べたらお腹に肉はついているけれど…豚なんかじゃないんだけど?!

これでもBMI数値では痩せ型だ。豚なんて呼ばれる筋合いはない。本当にムカつくな~。朝から何なのよ!

フンッと顔を背けてソファーに寝転がりテレビを見始めた。…なんつーか、掴めない奴よ。

「静綺ちゃんって裁縫出来る…?」

珍しく朝から豊さんが話を掛けてきたかと思えば、ボタンの取れたシャツを手に持っている。

てゆーか豊さんが私を’静綺ちゃん’って呼んでる…!元々口数の多いタイプじゃないから名前を呼ばれただけで嬉しくなる。何となく名前覚えられていないような気がしたから。
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