【完】スキャンダル・ヒロイン
Act4  白馬の王子様と意地悪な王様。

Act4  白馬の王子様と意地悪な王様。




「あっはっはっ、まさか幽霊に間違われるとはね」

一夜明けて、嵐のような夜が嘘だったかのように晴れ渡った朝。

窓から一筋の光が入ってきて、その光りを浴びてダイニングテーブルに座って穏やかに微笑む彼。

大滝昴がこのおんぼろ寮にやって来た!それはまるで夢のような奇跡だ!…いや別にファンって訳じゃないけれど、さ。グリュッグエンターテイメントの事を調べていくうちに、彼について詳しくなっていて何故か動画サイトで検索をしちゃたり…。

所謂顔ファンって奴だ。自分にこんなミーハーな一面があったとは呆れるけれど。

「そりゃいきなり来たらびっくりするでしょうよ。」

「へへ、ごめんってば山之内さん。昨日近くで飲んでたんだ。マンションに帰るより寮の方が近いと思って
でもたっさんも俺の顔を見て’おお昴か’ってフッツーに入れてくれたんだぜ?」

「飲んでたって。昴…スキャンダルには気をつけてね。ただでさえあんたは今注目されて狙われてるんだから…」

「はいはい。山之内さんは相変わらず口うるさいなぁー。大丈夫、演出家の先生と飲んでただけだから。
今度舞台をやろうって話が出てるんだ」

「えぇー昴今度舞台に出るのー?瑠璃も見たいー!」

「始まったらチケット預けとくね。豊さんも見に来てよ。結構コメディで面白いよ。
瑠璃さんと一緒に楽屋にも遊びに来たらいい。お笑い系にも通じてる演出家の人だから、絶対豊さんと話も合うと思う。
あ、そういえばこの間俺豊さんの前説見たんだ。相変わらず超面白くって腹を抱えて笑っちゃったよ」

その言葉にあの無表情な豊さんさえにこりと微笑んでこくんと頷いた。
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