183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~
離婚前提で結婚することになりました

(お嬢様でもないのに、今時、お見合いなんて……)

ここは都内にある老舗料亭の八畳間。

春うららかな日差しが内縁側のガラス戸越しに差し込み、雅な日本庭園の池には桜の花びらが浮かんでいる。

西谷真衣(にしたにまい)は生成り地に桜模様の振袖を着て、座卓に向かい正座をしている。

背中の中ほどまである黒髪を美しく結い上げ、控えめなかんざしで飾っていた。

百五十四センチの小柄で細身の体躯には、和装がよく似合う。

二十七歳という年齢よりは二、三歳若く見える可愛らしい顔立ちをしているのだが、庭を見ながら鼻の付け根に思いきり皺を寄せ、その後にため息をついてしまった。

すると、隣に座る祖父に叱られる。

「真衣、もっと愛想よくせんか」

「まだ相手が来てないんだからいいじゃない。こっちは二時間も前に美容室に行って、着付けと髪のセットをしたんだよ。疲れてるの」

「お前はすぐ口答えする。そんなことでは気に入ってもらえんぞ」

(お見合いで結婚するつもりはないから、気に入られたくないんだけど……)
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