183日のお見合い結婚~御曹司は新妻への溺甘な欲情を抑えない~

それ以上の反論は心の中にとどめておくことにした。

今は独り暮らしをしている真衣だが、大学を出るまでは、母と妹と三人で暮らしていた。

離婚家庭で物心ついた時から父親との付き合いは一切なく、学費などの金銭的な面で祖父には随分と世話になってきたので強く文句を言えない。

今日のこの見合いも、祖父への恩返しのつもりで渋々了承した。

なんでも相手は、祖父の初恋の女性の孫だという。

八十歳を超えた祖父は妻に先立たれて以来、八年間、寂しい独り暮らしを続けている。

話し相手欲しさに最近、俳句クラブに入会したのだが、そこで初恋の女性と半世紀ぶりに再会したそうだ。

その女性も伴侶を亡くしているということで、祖父はすっかり熱を上げている。

真衣の見合いも、その人との仲を深めたいがために画策されたようなもの。

(おじいちゃんまで羽織袴姿で、めかしこんじゃって。若々しく見せたいんだろうけど、髪の毛、真っ黒に染めたら、皺だらけの顔に合ってないよ……)

色々と指摘したい気持ちはあるが、祖父が生き生きとしているのは喜ばしいことだ。

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