強引な無気力男子と女王子

告白の返事は

 「悠理‥‥‥!好き‥‥‥!」
 とうとう「好き」の2文字を口にする。
 悠理は、何も言わない。
 抱き合ったまま、無言の空間が広がる。
 静かすぎて、自分の鼓動の音が悠理に伝わらないか心配になる。
 「悠、理‥‥‥?」
 反応を見せない悠理が心配になって、私は顔をあげる。
 その時、あげた顔にポツ、と雫が当たった。
 直後、ザーッと、雨が降りだす。
 「えっ、嘘!雨!?」
 悠理から体を離す。
 天気予報では雨なんて言ってなかったのに‥‥‥!
 「真紘」
 「はい!?」
 急に悠理が口を開いて私の名前を呼んだせいで、私は変な返事をしてしまった。
 「俺の家すぐそこだけど‥‥‥来る?」
 「え‥‥‥」
 想定外のお誘いに、一瞬思考が停止する。
 「雨だし、傘持ってなさそうだし、真紘の家ここから遠いし、服濡れたままだと風邪ひくし」
 「それはまあ、そうだけど‥‥‥」
 普段より悠理は饒舌になっている。
 「じゃあ、こっち」
 「え?ちょ、待って‥‥‥!」
 悠理は私の手を引いて、スタスタと歩きだした。

 「お邪魔しまーす‥‥‥」
 「誰もいないし、リビングで適当に待っといて」
 「分かった」
 悠理は、私一人をリビングたな残して二階に上がっていく。
 悠理の家は、戸建てで、大きめだった。
 リビングを一周回って、あることに気づく。
 ‥‥‥この家、悠理以外に人が生活してるあとがない?
 食器棚に置かれていたコップも一つだし、それ以外の食器も二人以上で生活するのには少なすぎる。
 濡れた格好でソファに座るわけにもいかず、そのまま立ち尽くす。
 「真紘、これ」
 「ひゃわあ!?」
 「‥‥‥なんでそんな驚いてるの」
 「急に声かけられたら誰だって驚くでしょ!」
 というか、気配消すなって‥‥‥!
 「そんなことより、これ」
 「何?これ」
 手渡されたのはバスタオルと、悠理が普段着ているであろうパジャマだった。
 「風邪引いたらいけないし、シャワー浴びてきなよ。風呂向こうだから」
 「あ、ありがとう」
 私としても風邪を引くのは嫌なので、素直に指示に従う。
 
 「悠理、お風呂ありがとう」
 「ん」
 このパジャマ、貸してくれるのは良いんだけど、悠理の匂いがして悠理に抱きしめられているようで落ち着かないな。
 いや、別に匂い嗅いでるわけじゃないんだけど!
 悠理は私と目を合わせない。
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