予想外の妊娠ですが、極上社長は身ごもり妻の心も体も娶りたい
プロローグ
 


私、吉木香澄は自宅のマンションでひとり、祈るような気持で天井を見上げていた。

震える手で持っているのは、プラスチックの細長いペンのような妊娠検査薬。そこには小さな窓がふたつついていて、それぞれ『判定』『終了』と書いてある。

『終了』の小窓に線が入っていれば、正しく検査ができたという証。そして『判定』の小窓に線が浮かび上がっていれば、陽性。つまり、妊娠しているという証。

 何度も繰り返し説明書を読んで、使い方をしっかり確認してから検査をした。一分から三分待てばいいと書いてあったから、もう結果はでているはずだ。

「あー、もう。どうしよう、見るのがこわい……!」

不安のあまりひとりごとをつぶやいてしまう。

できるなら、なかったことにしてしまいたい。いっそこのまま結果を見ずに捨ててしまおうかな。
なんて考えて、いやだめだと首を横に振る。

わざわざドラッグストアで検査薬を買ってきて調べたんだから、ちゃんと確認しないと。

臆病な自分に活をいれるように、きゅっと唇をかむ。


< 1 / 298 >

この作品をシェア

pagetop