君は私の唯一の光
【said 洸夜】




急いで俺のベットにあるナースコールを押す。



「どうされました?」


「乃々花が倒れました。今、ベットから落ちて、声をかけても返事がありません。」


「わかりました。すぐに向かいます。」



そう言って切れた通信。



すぐに、医者や看護師が大勢きた。全員、手慣れた感じだけど、緊張感のすごい空気だった。



一気にいろんな機械に繋がれた乃々花。テレビで見るような光景だった。正直、怖かった。



「とりあえず、処置は終わった。あとは、いつ目を覚ますか。」



医者の言った言葉に目を見張った。“いつ目を覚ますか”って、意味わかんねー。だって、普通1日もすれば、覚ますだろ?



ぞろぞろと医者たちが病室から出ていくのをただ呆然と見ることしかできなかった。乃々花の方を見ると、1人だけ、看護師が乃々花の手を握っていた。目に涙を溜めて。



「あの……」



恐る恐る、看護師に話しかける。聞かない方がいいのかもしれなかったけど、それでも、知りたいって思った。



「乃々花って、相当悪い病気なんですか?」



ゆっくりこっちを向いた看護師は、俺が起きた時、乃々花と親そうに話していた人だった。



「あー、ごめんね。こんな姿見せちゃって。」



「いえ。」



「洸夜くんには、話しておいた方がいいかな。同室だから、いろいろ助けてもらう事も多いと思うし。」



そう呟くと、思い出す様に語り出した。



乃々花のファブリー病の事。



乃々花の4歳からの生活。



「乃々ちゃんはね、私が初めて担当になった子なんだ。まだ新人で、乃々ちゃんにも、乃々ちゃんのご家族にも、迷惑たくさんかけちゃったんだけどね。本当は、看護師が1人に固執しちゃダメなんだけど、どうしても、乃々ちゃんだけは、感情移入とかしちゃって。
10年経っても、全然乃々ちゃん離れできないんだよね。」



この時、俺がどれだけ軽率で、自分勝手で、酷い人間かがわかった。



これまでの乃々花の苦悩は、俺がわかる訳がない。ましてや、わかるなんて、言える訳がない。そんなの、俺の自己満足だ。



乃々花は、どれだけ悩んで、絶望して、こんなに広い4人用の部屋でたった1人、何を思って生きていたのだろうか。想像なんてしたところで、その時の乃々花の気持ちは、計り知れない。



これからの乃々花の未来は、いつまで続くのかわからない。ただ、命がある間だけでも、少しでも幸せや楽しい時間、笑える時があればいいと、心の底から思った。






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